2013年11月22日金曜日

【ルポ】科学バー 海編 vol.11「地震と噴火の予知はどう違う? 知識ゼロから学ぶ“地底のふしぎ”」

みんな大好き、牡蠣のオイル煮をバゲットにのせて。お酒に合う卵のピクルスもいかがでしょうか。「ポテサラとカレーが食べたくて・・・」と入ってくるなりおっしゃるお客様もいるほどの「大人のポテサラ」ももちろんご用意(でも写真がなくて)。今夜の〆はカレーではなく、キューバ・ナイトでビックリするほど喜ばれた黒いんげん豆煮込みかけごはん「アロス・コン・フリホーレス・ネグロス」をご用意。カレーじゃないと聞いた瞬間の「え?(落胆)」という表情は2時間後、満面の笑みに変わるのでしょうか・・・。
お酒はいつもどおり、ビール、スパークリングワイン、赤ワイン。ソフトドリンクは、ペリエ、ピンクグレーフルーツジュースをご用意しました。

30分ほど、お酒を飲みお料理を召し上がっていただく時間を過ごした後、いよいよ海の研究者、後藤忠徳さんのトークのはじまり。
珍しくスーツ姿の後藤さん。なんでも、研究者人生初の朝から発表三連チャン。国際会議での発表を午前、午後に終えて、電車に飛び乗り日本橋に駆けつけて、もう一回がこちら。
お元気そうですが、実は前日の朝、沖縄の近くにある熱水噴出孔調査のための航海を終えたばかり。超過密スケジュール絶賛進行中です。ここ数日もそうですが、たぶんこの1年は本当にお忙しかったはず。ふだんの研究、講義に加えて、本を2冊執筆したのですからね。夏に『海の授業(幻冬舎)、そして先月は『地底の科学(ベレ出版)
前書は「寝転びながら受ける授業」なんて称した方がいたようですが、うまいですね。小学校の高学年くらいから大人まで楽しめる工夫が随所にされている同書は、海は広くて深いので、まだまだ謎がいっぱいあることを再認識させてくれます。こうした良書をきっかけに、海の世界にかかわる人が増えるといい(船を降りた人間が書くのもなんですが)
最新刊の『地底の科学』は、週刊文春11月7日号で立花隆さんが「きわめて面白い」と絶賛したばかり。後藤さんの師匠がこれを見つけて知らせてくださったそう。さらに、科学バー常連のSさんには記事の切り抜きをご持参いただきました(ありがとうございます!)
まだ最後まで読んでないので多くは書きませんが、本当にすばらしい。地面の下の世界が、いかに地面の上の世界に住むわたしたち人間の暮らしと密接に関わっているのか実感できます。ファンデーションの原料となる絹雲母(セリサイト)は地下10メートルの世界の話。毎日飲む水は地下100メートルまでの話。温泉の話は地下1000メートルの世界の話といった具合に、おおよその深さで地底を区切って、身近な話題をふりながら、地下の世界をどうやって掘らずに調べるのか、が丁寧に書かれているのです。すべてご自分で作ったという図もたくさん。話題が豊富なので飽きるヒマなし。

今回の科学バーは、噴火と地震の予知はどう違う? がテーマですから、さらに地下深く、10000メートル〜100000メートル、書き直しますと、地下10〜100キロメートルの世界のお話です。ものすごく深い。で、その深さが話のキモだったりするわけです。
話は逸れますが、工学部の先生はネクタイを締めている方が多いんですってね。スラックスで、上着として作業着を着ているイメージだったのですが、実際は企業から転身される方がけっこういて、会社員時代の習慣のままネクタイ着用なのだそうです。

さて、いよいよ本題ですが、すでに長くなってしまいましたので、かなりはしょりますが、要するに「火山噴火の予知は信頼できるレベルに確実に近づいているけれども、地震の予知はできない」。現段階では、ということですが。決定的な差は、“深さ”。富士山の下の地下を調査してみると、20〜30キロメートルくらいのところにマグマがありそうだとわかった。だから、いつかは噴火するかもしれないけれど、明日噴火することはなさそうとわかる。一昨日、小笠原諸島の近くの海底火山が噴火して新島が生まれましたが、これも70年代の噴火以降、ガスが出て海面の色が変わる現象が続いていたので「近いうちに噴火するね」と予想されていた。ところが、地震のほうは、桁違いに深い場所にあるプレートやマントルがかかわるだけに、調べるのが大変すぎる! 19世紀から発展してきた地下探査の技術ですし、確かにマントルまで掘り抜こう by ちきゅう、という現代ですから、深い場所も調べられなくはないのだけれど・・・予知まではちょっと・・・無理っぽい・・・という段階だそうです。
「地震と噴火」は「科学と技術」みたいなもので、並んで目にすることが多いので見慣れているけれど、実際はどちらも大きく違うんですね。

最後に参考図書をひとつご紹介。宇宙物理学者のトーマス・ゴールド著『未知なる地底高熱生物圏』(2000年、大月書店)。立花隆さんは同書についても書評を書いています。「きわめて知的にチャレンジングな本だ。これこそ、パラダイムの転換を迫る書といってよい。サイエンスの世界で、これまで常識とされていた定説が次々にくつがえされる・・・。(立花隆著『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』2003、文春文庫)。刊行から年数が経っていますが、石油の有機・無機起源説にしてもまだ未解明の謎がほとんどですから、面白いはず。

次回の海編は、1月24日(金)開催予定。今回の話をおさらいした後、さらに話を深めていきます。これは!と思ういいスライドは何度でも使いますが、今回ご参加の皆様も楽しく学べるようにしますので、ぜひご参加ください。お待ちしています。

(H)


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ギャラリーキッチンKIWI

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