2013年2月25日月曜日

【ルポ】科学バー サル編 vol.3「ヒトは飲酒で進化した?」

大人って、
どうしてお酒を飲むのかなあ〜♫
毎日酔っぱらっていていいのかなあ〜♫

飲酒するのは遺伝子のせい、なんていう
飲んべえに都合のいい話になるのでしょうか?

科学バー、サル編。
当夜のテーマは「飲酒」。
今回も、アフリカをおもなフィールドに活躍する
霊長類学者の山越言さんが、
京都から駆けつけてくれました。

早く話を! と焦る気持ちはわかりますが、
まずは、KIWIの料理家スヌ子のおいしいつまみと、
お酒をどうぞ。

寒い夜でしたからね、
まずは温かいコーンスープです。

定番メニューの大人のポテサラ、
牡蠣のオイル煮、ごちそうミートローフ、
スティックサラダ。
ミートローフのかげに隠れていますが、
蓮根ソテー チリ風味とロマネスコのピクルスも。

お酒は、スパークリングワイン、ビール、
ミートローフには赤ワインを。

今回の珍食材は、コスタリカ産のパルミット。
チンパンジーが大好きな、
ヤシの葉の付け根の髄の部分で(※1)
英名は「Heart of palm」
サラダによし、グラタンに入れてよしだそうで、
今回はかまぼこ状にスライスしたものに
コリアンダーをのせて上からレモンを絞るだけ。
スタッフの食べる分が残っていなかったのが、
好評だった何よりの証拠。

さて、本題に入りましょう。
冒頭から驚きの事実が明かされました。
サルで酒とくれば「猿酒」ですが、
「猿酒はこの世に存在しない」。 え?
猿酒は飲んだことはなくても、
その言葉を聞いたことがあるでしょう。
辞書にも載っています。
「猿が木のうろや岩石のくぼみなどに
 蓄えておいた果実や木の実が自然発酵して
 酒のようになったもの。ましら酒。《季 秋》」(デジタル大辞泉)
見てきたような書き方ですが、
山越さんによると「チンパンジーを含めて、
サルが食べ物を貯蔵する行動はまだ観察されたことがない」のです。
大丈夫か辞書。
ここから、常識を鵜呑みにしない科学的スタンスで、
お酒の起源に迫っていく知の探検のはじまりです。

アフリカ研究者でもある山越さんは、
ギニアの人々の酒づくりを調べた結果をふまえ、
ヤシ酒がお酒の起源のひとつでは? とにらんでいます。
ギニアではふだん、
ラフィアヤシの樹液が原料のヤシ酒(※2)を飲むそうですが、
これは十分な樹液の量があり、手軽、おいしいと三拍子揃っている。
そもそも貯蔵するのは、ヒトでもけっこう最近のことなので、
はじまりの酒は、穀物酒ではないだろうと。
ワインのような果実酒や、
アフリカでいまも飲まれているハチミツ酒も
候補として考えられるけれど、それらの検証は、
次回以降、いつかまた。

〆はいつもの特製欧風チキンカレーとパセリナッツライス。
1週間煮込んだ自信作。
ひとくち目はあっさり、だけど後からじんわり、
おいしさがやってきます。ちょっと辛め。
お代わりのご注文もたくさん。

トークが終わったあとは、
山越さんも席について、話はお酒の話から、
フランス語で交わすギニアの人たちとのコミュニケーション、
フィールドワーク裏話まで。
海外経験豊富な方々が多いこともあって、
ここからまたもうひと盛り上がり。
スクリーンには、チンパンジーがヤシ酒をこっそり飲む場面や、
ボッソウの人とかかわる様子など、
貴重な映像が映し出され、いい雰囲気。

アフリカ、チンパンジー、ヤシ酒に
どっぷり浸かったひと時。
ご満足いただけたでしょうか。
またのお越しをお待ちしています。

さて、そういう訳で、
飲んべえに都合のいい遺伝子の話にはなりませんでした。
「500万年前に遡るバーの遺跡発見!」となれば、
話はちがってくるのでしょうが(※3)

※1
 山越さんによると、瓶詰めのパルミットはアブラヤシではないので、
 ギニア共和国ボッソウのチンパンジーが食べているものとは別種。
 瓶の説明ラベルには栽培品種とありました。
※2
 ラフィアヤシの開花は一生に一度だけ。その開花直前に花の基部に
 切り込みを入れてとった樹液がヤシ酒の原料。その量は多く、
 1本のヤシから1か月にわたって、 計約250〜400リットルの樹液がとれる。
 仮に300リットルとして、1日当たり10リットル。毎日酒盛り(笑)。
※3
 当科学バーの2日後の日曜日、夜7時半から放映のNHK「ダーウィンが来た!」では、
 ほ乳類のルーツを探る際に注目される珍獣ツパイが、
 ふだんからヤシ酒を飲んでいる様子を放映。特定のヤシとの共進化という話なので、
 こちらも飲んべえに都合のいい話はなし。バー遺跡の発見が待たれます。

(H)

Happiness is always delicious
ギャラリーキッチンKIWI

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